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INTO THE GROOVE

洋楽/邦楽、メジャー/インディー、分け隔てなく。「今」を生きる、選りすぐりのポップミュージックを。 selected by YAMAGE

岡崎体育のMステ出演に思う

一昨日のことですが、テレビ朝日MUSIC STATION」に出演した岡崎体育を見て思ったことを書きます。

 

 岡崎体育は、映像作品“MUSIC VIDEO”で火が付き一躍有名になったシンガー・ソングライター。彼を知らない方は、まずはその“MUSIC VIDEO”を見てみてください。

 

 いわゆる「ミュージック・ビデオあるあるネタ」だけで構成された映像作品なんですが、これの何が面白いかって、ミュージック・ビデオというフォーマットを使ってミュージック・ビデオを揶揄するという、メタ構造を作っている点に尽きますね。ある種のタブーを冒して笑いを取っています。

 その「音楽や映像を使って笑いを取る」スタンスはMUSIC VIDEO”に限らず、彼の他の映像作品やライブでも一貫しているスタンスです。6月に彼のライブを見る機会があったのですが、音楽コント作品としてかなり完成度が高かったですね。歌詞で楽曲の構成を「説明」するだけの”Explain”から、パペットとの会話形式でバンドマンに毒つくFRIENDS”など、ライブならではの演出で、あらゆる角度から笑いを追求していました(代表曲のMUSIC VIDEO”は映像作品として完成されているという理由で披露しないというストイックぶり)。

 笑いの作りとしては、陣内智則を思い起こさせる自作自演的な作風で、音楽の構造破壊で笑いを取るという点は、ゴールデンボンバーのパロディ感に近いですね。彼自身が公言しているように、音楽性は電気グルーヴからの影響を強く感じます。

 僕としては、岡崎体育のことはお笑い要素の強いミュージシャン、広義のエンターテイナーとして位置づけています。あくまでテクノ・ポップを下地に構成作家的に笑いをやっていて、芸人のやる音楽ネタとは違って(RADIO FISHまで突き抜けると例外ですが)ちゃんと丁寧に音を作っているのが伝わってきます。ただ、J-POPにリノベーションを起こしてきた電気グルーヴと比べると、音楽的に特筆すべきところは見当たらずネタが先行しているところはありますね。そういった意味で立ち位置はゴールデンボンバーが一番近い気がします。

 

 

 さて、前置きが長くなりましたが、そんな岡崎体育が10月14日「MUSIC STATION」に初出演しました。披露した曲は、Voice Of Heart”。これはライブでも定番の一曲なのですが、歌っている途中で歌詞を忘れ、その時の心情を「心の声」としてスピーカーから垂れ流し続けるという、放送事故コントですね。

 

この岡崎体育のMステ出演を受けて、思うところがありました。

 

1. エンターテイメントとして素晴らしかった

 さすがのパフォーマンスでした。あの「歌わない」パフォーマンスを、ミュージシャンの立場から、(今はかつてほど権威があるとは思えないけど)日本の音楽番組の殿堂とも言えるMステの場でやってのけたところに構造破壊=リノベーションがあって痛快でした。エンターテイナーとして、かっこよかったです。テレビを見てこういう気持ちになったのは、うたばんで見た神聖かまってちゃんとか、いつかの紅白で見たゴールデンボンバー以来かな。

 

2. テレビがカルチャーを拾い上げる場として機能した瞬間だった

 Mステに限らず、音楽番組の役割というのは、流行りのアーティストや良質な音楽と視聴者をつなぐことですが、ある時期から音楽のトレンドが読みにくくなり、言い方は悪いですが、音楽番組はレコード会社主導で売りたいアーティストの楽曲を一方的に垂れ流すメディアと化してしまった状況がありました。トレンドが読みにくくなった原因は、それまでセールスのほとんどを占めていたCDが売れなくなり、ダウンロードやストリーミングにマーケットが移ったことで、流行りの指標が分散したからですね。こういう状況にも関わらず、オリコンは変わらずCDセールスのみを頼りに、AKBやジャニーズが占拠するランキングを発表し続け、テレビ番組はそれに準じた、なんとも現場感のないブッキングし続けるという事態が続いていました。

 それが最近は少しは改善されつつある感じがします。依然としてAKBやジャニーズなど常連の席は固定されているのですが、今年のMステのラインナップを見ていると、CDが優れて売れているわけではないけど注目を集めている人や若手のブッキングが増えてますね。水曜日のカンパネラの2回に渡る出演や、ELEVEN PLAY&ライゾマティクスというメディアアート界からの参入が顕著ですが、それは今回の岡崎体育の出演でも改めて思いました。これまで電波に乗らなかった若手や新しいカルチャーを拾い上げようとする流れが感じられて良いと思います。こういう流れが日本でもっと大きく、音楽アワードや紅白レベルにまで浸透していったら面白いです。

 

3. J-POPはアイコン業なのか

 とはいえ、音楽なのに音楽以外のところばかり取り上げられるのって、ちょっとさみしいなとも思ったり。もっと音楽そのものについて語られても良いのにな、と思う気持ちもあります。今の時代、話題性を獲得するには、どうしてもキャラクター性やアイコン性、ファッション性が求められてしまう現状がありますよね。たとえば、水曜日のカンパネラは、コムアイのキャラクターやパフォーマンスの奇抜さに注目がいきがちなのはフックとして成功しているし上手いなと思うんですけど、ケンモチヒデフミのトラックを聴いて、これはどんなジャンルの音楽なんだろうとか、あるいは岡崎体育を聴いて、彼が影響を受けた電気グルーヴの曲も聴いてみようかなとか、そういうフィードバックってちゃんと起きてはいるんでしょうけど多くはない気がします。日本だとアーティスト信仰が強く、アーティストによる宗教をつくることに終始しがちで、音楽的な縦や横の繋がりが見えにくいところがあります。まあ、これに関しては国民性というか、今にはじまったことでもない気もしますし、ないものねだりなのかもしれませんが。ただ、今回、岡崎体育に並んでピコ太郎まで(映像のみですが)出演していた流れもあり、そんなことをぼんやりと考えてしまいました。いや、ネタは面白いしピコ太郎は何も悪くないんですけどね。