PLAYLIST - 2016 SUMMER (50 TRACKS)
TR-1. Angel Olsen - Sister
セイント・ヴィンセントが、名盤“St. Vincent”をもって新たなギターロック・クイーンの誕生を印象付けたのが2014年の出来事。僕もその年フジロックで目撃した、アニー・クラークの仁王立ちでギターを構える姿は未だに忘れられないのですが、米国のシンガー・ソングライター、エンジェル・オルセンの新譜を聴いて、あの時に匹敵する衝撃を受けました。近年活躍している女性ソロシンガーと比較するならば、彼女は、セイント・ヴィンセントの凛々しさと、ジェニー・ルイスの悲壮感を合わせ持った存在ですね。
アルバムの個人的ハイライトは、8分近くに及ぶ大曲“Sister”。彼女のギタリスト、ヴォーカリストとしての表現力がハイレベルで結実した傑作です。序盤のフリートウッド・マックを想起させる叙情的なフォーク・ロックから、“All my life I thought I'd change”とリフレインしながらギターを掻き鳴らすラストシーンに心震わされます。
TR-2. The Avalanches - Colours
900曲以上の楽曲の断片をサンプリングして作られたアルバム“Since I Left You”が大絶賛されたDJ集団アヴァランチーズが、16年ぶりにカムバック・アルバムをリリース。
今回のアルバムは全体的に歌ものが多くヒップホップ・マナーが強い印象ですが、サンプリング・コラージュの美しさで言えば、この“Colours”が最高ですね。前作のタイトル曲のインパクトにこそ至りませんが、2016年の夏を彩る名曲として長く聴き続けたい一曲。
TR-3. BadBadNotGood (feat. Charlotte Day Wilson) - In Your Eyes
TR-4. banvox - High And Grab
TR-5. Bon Iver - 33 GOD
ボン・イヴェールの新作リリースは2016年の一大イベントの一つ。前作でのオーガニック/フォークな作風に加え、ヴォーカルとリズムセクションをドラスティックに重厚にしたことで、彼の楽曲が元々持っている荘厳さ、神秘性を極限まで爆発させています。
TR-6. bonobos - Cruisin' Cruisin'
TR-7. BLACKPINK - Whistle
韓国YGエンターテイメントより、BLACKPINKのデビューEP“SQUARE ONE”収録曲。
浮遊感のあるビートと一度聴いたら耳から離れない口笛のリフで音数少なめに進行していくと思いきや、突如メロディアスなコーラスになだれ込む謎の展開。トラックの先鋭さやビジュアル性の高さは米国のフィフス・ハーモニーあたりのガールズグループを意識しているように思えますが、聴覚的な面白さでいえばこの曲はフィフス・ハーモニーを食ってますね。それくらいこのトラックはよくできているし中毒性があります。曲中で連呼している「ふぃ ぱらむ」は「口笛」って意味らしいです。
TR-8. Blood Orange - Better Than Me
ブラッド・オレンジことデヴ・ハインズの新作で個人的に一番刺さったのがこの曲。カーリー・レイ・ジェプセンをゲスト・ヴォーカルに迎えています。
変則的なドラムパターンと冷ややかなシンセを下敷きに、カーリーのウィスパー・ヴォイスがエロティックに香り立つ佳曲。デヴ・ハインズが書いたカーリーの極甘バラード“All That”(“E・MO・TION”収録)と好対照を成す曲とも言えます。こちらも良い曲なので、あわせて聴いていただきたいです。
TR-9. Cashmere Cat (feat. The Weeknd, Francis & The Lights) - Wild Love
TR-10. Cassius (feat. Ryan Tedder & JAW) - The Missing
TR-11. Chance The Rapper (feat. Jeremih, Francis & The Lights) - Summer Friends
TR-12. Chris Brown - Grass Ain't Greener
TR-13. Classixx - Grecian Summer
TR-14. Czecho No Republic - Dream Beach Sunset
TR-15. Crying - Wool In The Wash
TR-16. DAOKO - BANG!
日本の19歳ラップシンガーDAOKOのメジャー2ndシングル収録曲。作曲は次世代のトラックメイカー小島英也(ORESAMA)。
ファレルの“Happy”を想起させる60sノーザンサウンドに、小島流エレクトロ・ファンクのフレーバーを散りばめたダンスチューン。この曲でかつての宅録ヒップホップ女子からファッション・スターへと変貌を遂げたDAOKOに、脱カントリーを図りポップ・スターに転身したテイラー・スウィフトを重ねてしまいます。テンション的には“Shake It Off”ですもんね、この曲。個人的に、DAOKOの歌い方や立ち振る舞いに椎名林檎の影響を感じてニヤッとしてしまった曲でもあります。
TR-17. DIANA - Slipping Away
TR-18. DJ Snake (feat. Justin Bieber) - Let Me Love You
TR-19. Francis & The Lights (feat. Bon Iver & Kanye West) - Friends
米国のフランシス・スターウェル率いる音楽プロジェクト。チャンス・ザ・ラッパーの“Summer Friends”でフィーチャーされていた人ですね。これまでにEP4枚とシングル2枚をリリース済。カニエ・ウェストの“Can't Tell Me Nothing”のカヴァーが本人の目に留まり、今回のコラボレーションが実現したそうです。
何層ものヴォーカルと80s的近未来感のあるシンセを重ね合わせ録音された、重厚感のあるエレクトロ・トラック。そこに、カニエの歌ものにありがちなセンチメンタリズムと、ボン・ヴェールの繊細で神々しい歌声が絶妙なバランスでブレンドされています。コーラスで音数がピークを迎えるところでのファルセットが幻想的で美しく、涙腺を刺激します。
TR-20. Frank Ocean - Nikes
前作“channel ORANGE”によって育まれた期待を遥かに超えたニューアルバム“Blonde”より。このアルバムはどう考えても今年のベストアルバム候補で、ここから1曲選ぶのは難しいのですが、強いてあげるなら、オープニングトラックの“Nikes”ですね。
プリンスが、アルバム“Sign O' The Times”収録期に、低速で録音した歌声を後から早回しにした時に生まれる奇妙な歌声をいくつか遺しているのですが、“Nikes”の前半部ではそれを模したような中性的な歌声を、後半部ではヴォコーダー交じりのスムースなラップを披露。これがリヴァーブを施したアンビエントR&Bのトラックと溶け合い絶妙な化学反応を起こしています。
TR-21. Fudge - In My Shoes
TR-22. GLIM SPANKY - 怒りをくれよ
TR-23. HyperJuice × Habanero Posse (feat. J-REXXX) - Fiyahhhh
TR-24. Kanye West (feat. Sia & Vic Mensa) - Wolves
TR-25. Kings Of Leon - Waste A Moment
TR-26. Lady Gaga - Perfect Illusion
レディー・ガガの11月発表のアルバム“Joanne”からのリードシングル。
前作がトニー・ベネットとのジャズ・アルバムで、彼女はどこに向かっていくのだろうという印象でしたが、このシングルで彼女はポップ・フィールドに帰ってくることを予告しています。プロデュースは、マーク・ロンソンにケヴィン・パーカー(テーム・インパラ)、ブラッドポップ(ブラッド・ダイアモンズ)。リードシングルにしてはやや弱い気もしますが、ガガにありそうでなかった、サイケデリック・ディスコ・ロック路線は新鮮で良いです。アルバムの方は、ベック、フローレンス・ウェルチ(フローレンス&ザ・マシーン)、ファーザー・ジョン・ミスティの参加がほのめかされていますが、もしこれが本当だとしたらかなり面白い。
TR-27. Lil Yachty - All In
TR-28. The Lumineers - Ophelia
TR-29. Major Lazer (feat. Justin Bieber & MØ) - Cold Water
TR-30. Maxwell - Fingers Crossed
TR-31. M.I.A. (feat. ZAYN) - Freedun
TR-32. Michael Kiwanuka - Black Man In A White World
BBC「Sound Of 2012」で1位に選ばれていた、イギリスの黒人シンガーソングライターです。あの年は2位のフランク・オーシャンがあまりにも鮮烈だったため他が霞んでしまいましたが、今年リリースされたキワーヌカのニューアルバム“Love & Hate”は、フランク・オーシャンやビヨンセの新譜に並ぶ傑作です。
軽快なアフリカン・ビートに、ストリングスがアクセントを添えるクラシックなトラック。そこにマーヴィン・ゲイを彷彿させる、哀愁を帯びたスモーキーなヴォーカルと、畳み掛けるように繰り返されるコーラスが重なるシンプルな楽曲ですが、タイトルが示唆するように、昨今のブラックコミュニティのアイデンティティに迫る重いテーマを孕んでいます。終盤の“I'm not wrong”、“It's alright”と嘆くように絞り出されるシャウトは、昨年のケンドリック・ラマー“Alright”にも呼応し、匹敵するほどの切実さ。ブラックミュージックの今を象徴するアンセムとして、次世代に歌い次がれるであろうポテンシャルを感じます。
TR-33. Mija & Vendata - Better
ロサンゼルスを拠点に活動する女性DJ/プロデューサーのミハと、同じくロサンゼルスを拠点に活動するデュオ、ヴェンダーラによるコラボシングル。ジャンルはフューチャーベースという、オーストラリア発祥の、煌びやかなシンセサウンドに独特のヴォイスサンプルを織り交ぜたエレクトロニック・ダンスミュージックですね。清涼感あふれるなかに哀愁を感じさせるサマーアンセムです。MVもいい感じ。
TR-34. NAO - Girlfriend
TR-35. Oddisee - Brea
TR-36. Pa's Lam System - TWISTSTEP
Pa's Lam System(通称パズラム)は、2014年に日本のネットレーベルMaltine Recordsよりリリースされた“I'm coming”が米国の音楽批評サイトPitchforkで取り上げられ話題を呼んだトラックメイカーチーム。この“TWISTSTEP”は、メジャーデビューEP収録のタイトル曲。
フューチャーベースを基軸にした従来のパズラムサウンドはそのままに、ドラムンベースやダブステップなどめまぐるしい展開を見せる高密度なトラック。メジャーデビューだからか少々力みすぎな印象を受けないこともないですが、サウンドのオリジナリティの高さは健在ですね。日本のメジャーレーベルから現行のクラブミュージックを取り入れた楽曲がリリースされただけでも十分価値があります。
TR-37. Rae Sremmurd (feat. Gucci Mane) - Black Beatles
TR-38. Rat Boy - Get Over It
TR-39. Sampha - Blood On Me
TR-40. ScHoolboy Q - JoHn Muir
TR-41. Shura - Make It Up
TR-42. Suchmos - MINT
TR-43. TAEYEON - Why
TR-44. Tilka - Like I Do
TR-45. Usher (feat. Future) - Rivals
TR-46. yahyel - Once
TR-47. Yunomi (feat. TORIENA) - 大江戸コントローラー
TR-48. 泉まくら - 枕
TR-49. 水曜日のカンパネラ - 松尾芭蕉
昨年の“ラー”に続きコマーシャル要素の強い企画曲で、派手な楽曲とMVが届きました。まだYouTubeでのストリーミングのみで、音源化されていません。
ケンモチヒデフミ氏によるエレクトロ・ハウスやトラップ、ジュークなどを融合したオールマイティな叙情派ダンストラックに、言葉遊びに富んだユーモラスなリリックがコムアイのヘタウマなラップによって紡がれる、いつもの水カンワールドにして、これまでの水カンの集大成的内容。特に今回は、聴き手に休む暇を与えないほどに怒涛の展開を見せる楽曲構成と、いつになくエモーショナルなコーラスが印象的。J-POPをしっかり更新していますね。MVの方も、J-POP史上類を見ないスケール感とクオリティの高さで圧倒されました。
TR-50. The 1975 - Somebody Else